乗馬や歴史の話題でよく耳にする「鐙とは何か」、言葉は知っているけれど実際の役割や種類、使い方まで深く理解している方は意外と少ないかもしれません。
鐙がなければ快適で安全な乗馬は成立しませんが、素材や形、選び方やお手入れ方法ひとつで乗馬体験は大きく変わります。
この記事では、鐙とは何かを基本からしっかり解説し、歴史や種類、活用法、知っておきたい疑問点まで分かりやすくご紹介します。
鐙について正しい知識を身につけ、ご自身の用途や好みにぴったりの鐙を選ぶためのヒントを見つけてください。
鐙とは何かを詳しく解説

鐙(あぶみ)は、馬に乗る際に足をかけるための道具です。
日本だけでなく、世界中で広く使われている馬具の一つです。
鐙を使うことで馬上での安定感が増し、安全に馬を操作できるようになります。
馬術だけでなく、歴史や文化の中でも重要な役割を果たしてきました。
鐙の役割
鐙の主な役割は、馬に乗る人が足をかけることで体勢を安定させることです。
馬上でのバランスを向上させ、体重をしっかり支えることができます。
鐙を利用することで乗り降りが簡単になり、初心者でも安全に乗馬できるようになるのも特徴です。
また、馬を速く走らせたり、急に止めたりする際にも鐙が大きなサポートとなります。
- 体重移動による馬の操作が容易になる
- 長時間の乗馬でも疲れにくくなる
- 落馬の危険を軽減する
鐙の形状と構造
鐙は一般的に、足をしっかり固定できる輪の形をしています。
足を入れる部分(踏み台)と、この部分を吊るすバンド(鐙革)から構成されます。
形状やサイズは用途や馬術のスタイルによって様々です。
日本の伝統的な鐙と西洋の鐙では形が異なります。
種類 | 形状の特徴 | 用途 |
---|---|---|
和鐙 | 幅広で、木や金属で作られる | 武士の乗馬や装飾用 |
西洋鐙 | 細長く、軽量な金属製が多い | 競技やレジャー乗馬 |
鐙の歴史
鐙は紀元前4〜5世紀ごろに中国で生まれたとされています。
そこからユーラシア大陸を経て、世界中に広まりました。
日本には6世紀ごろに伝わり、武士の台頭とともに発展していきました。
鐙の登場によって、馬を使った戦争や交通の発展にも大きな変化が生まれました。
鐙の素材
鐙には様々な素材が使われてきました。
古くは木や革、時代が進むにつれて鉄や青銅、さらには現在ではアルミニウムやプラスチックも使われています。
素材によって重さや耐久性、手入れのしやすさが異なります。
実用性だけでなく、装飾性に優れたものもあり、芸術品としても価値が高い鐙も存在します。
鐙の使い方
鐙は、乗馬の際に鞍(くら)につるした状態で使います。
まずは足を鐙の輪の中にしっかり入れ、次に反対側も同様に足をかけます。
足の位置や深さによって安全性と操作性が変わるので注意が必要です。
- 鞍に鐙をセットする
- 馬に乗る際、利き足から鐙に足をかける
- 騎乗後、もう片方の足も鐙にかけバランスをとる
- 乗馬中は踵を軽く下げて安定させる
降りる時は、まず鐙から足を外すことで安全に下馬できます。
鐙がもたらした乗馬への影響
鐙の登場は乗馬のスタイルや技術に大きな変革をもたらしました。
馬上での安定性が向上したため、長時間の移動や激しい戦闘にも対応可能となりました。
また、騎馬戦術の発展や、馬術競技の多様化にも大きな影響を与えました。
鐙によって馬と人との関係性、ひいては社会の発展にも寄与したのです。
鐙の種類

鐙にはさまざまな種類があり、用途や地域ごとに特徴が異なります。
時代や文化によって形や素材、デザインの違いが見られ、それぞれの目的に合った機能を持っています。
西洋の鐙
西洋で使われる鐙は、主に馬の乗り手のバランスを保つために発展してきました。
鉄やアルミ、ステンレスなどの金属を素材とすることが多く、丈夫で長持ちしやすいのが特徴です。
大きさや形状にも様々なバリエーションがあり、用途に応じて選ばれます。
- イングリッシュ鐙:馬術競技で広く使われるタイプ
- ウェスタン鐙:カウボーイが使用する幅広い鐙
- セーフティ鐙:安全性を高めるために側面が可動するもの
それぞれのスタイルに合わせてデザインや素材が工夫されています。
日本の鐙
日本では独自に発展した鐙が存在し、古くは武士が戦場や移動に使っていました。
日本の鐙の大きな特徴は、幅広で足をしっかり支えられるようになっている点です。
種類 | 素材 | 主な用途 |
---|---|---|
木鐙 | 木 | 平安時代から鎌倉時代の武士が主に使用 |
鉄鐙 | 鉄 | 戦国時代以降に普及、装飾も多種多様 |
漆塗り鐙 | 木+漆 | 格式高い武士や儀式用 |
日本の鐙は美しい装飾や漆塗りなど芸術的な価値も高く評価されています。
スポーツ用鐙
現代では馬術や障害飛越、競馬といったスポーツで使用される鐙も重要な役割を果たしています。
スポーツ用鐙は安全性や快適性、グリップ力が重視され、素材にも工夫が凝らされています。
特に近年では軽量な合成樹脂や耐久性のある金属製が人気です。
乗り手の技術や競技内容に応じて、最適な鐙が選ばれています。
伝統的な鐙
傳統的な鐙は、その土地の文化や歴史と深く結びついています。
例えば、世界各地の騎馬民族が使った鐙は、それぞれ独特な形状や装飾があります。
展示や資料館に残る鐙は、当時の技術や美意識を伝えてくれます。
今でも伝統行事や祭りなどで使用されることがあり、人々の暮らしや文化の一部として大切にされています。
鐙を選ぶポイント

鐙は乗馬の安全性や快適性を左右する重要な馬具です。
さまざまな種類や素材があり、選び方によって騎乗感覚も大きく変わります。
自分に合った鐙を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。
使用目的
鐙を選ぶ際には、まず騎乗の目的や競技の種類を明確に考えましょう。
乗馬といっても、レジャーのトレッキングや競技用、馬術の練習用など、用途によって最適な鐙が異なります。
- トレッキング用:長時間乗る場合は軽量で快適な素材が向いています。
- 障害馬術用:滑り止め加工や衝撃吸収機能が備わったものがおすすめです。
- 日常練習用:丈夫で手入れしやすい鐙を選ぶとメンテナンスも簡単です。
自分の乗馬スタイルに合わせて鐙の特徴を比較し、適切なものを選びましょう。
安全性
鐙の安全性は騎手の命に関わる大切なポイントです。
落馬時に足が抜けやすい形状や、安全鐙と呼ばれる脱着がしやすい鐙も人気があります。
特にセーフティーストラップ付きや、足が引っかかりにくいデザインの鐙は初心者にもおすすめです。
鐙の種類 | 安全機能 | 対象者 |
---|---|---|
セーフティ鐙 | 緊急時に簡単に外れる | 初心者・ジュニア |
オープンタイプ鐙 | 開口部があり、足が抜けやすい | 子ども・ビギナー |
伝統的な鐙 | 特別な安全構造なし | 上級者・経験者 |
安全性に配慮された鐙を選ぶことで、安心して乗馬を楽しむことができます。
サイズとフィット感
鐙のサイズが合っていないと、足が入りにくかったり安定感が損なわれたりします。
多くの場合、鐙の幅は足のサイズに合わせて選びますが、ゆとりがありすぎると逆に危険です。
靴の幅よりも約1cm程度余裕のあるサイズが一般的に適切だとされています。
また、鐙には素材や重量も様々あるので、手に取って試してみることが大切です。
自分の足にぴったりと合った鐙を選ぶことで、長時間の騎乗でも疲れにくくなります。
鐙の手入れ方法

鐙は乗馬において重要な役割を果たす装具ですので、定期的な手入れを行うことで長く安全に使用できます。
適切なケアを心がけることで、鐙本来の美しさや機能性も維持できます。
日常のケア
鐙を長持ちさせるためには、使った後の毎日のケアがとても大切です。
- 乗馬後、やわらかい布で鐙の表面についたホコリや泥をやさしく拭き取ります。
- 濡れてしまった場合は、乾いた布できちんと水気を拭き取り、風通しのよい場所に置いて自然乾燥させます。
- 定期的に専用のクリーナーやオイルで艶出しや保護を行いましょう。
- 革製の部品がついている場合は、レザー用のクリームで保湿ケアもプラスすると良いでしょう。
こまめなお手入れが鐙の寿命を延ばします。
汚れの落とし方
鐙に頑固な汚れがついた場合には、やや時間をかけて丁寧に汚れを落とします。
素材 | おすすめの洗浄方法 |
---|---|
金属製 | 中性洗剤を薄めた水に布を浸し、汚れを拭き取ったあと水気をよく拭いて乾燥させます。 |
木製 | 固く絞った布で汚れを拭き、乾燥させた後に専用オイルで保護をしてください。 |
樹脂製 | 水拭きで十分ですが、汚れがひどい場合は中性洗剤を薄めて使います。 |
水洗いは避け、湿気が残らないようにすることもポイントです。
点検ポイント
安全のためにも、鐙は使うたびにしっかりと点検することが大切です。
- 割れや変形がないか、全体を目視でチェックします。
- 金具やネジが緩んでいないか、しっかり固定されているか確認しましょう。
- 靴を乗せる部分の滑り止めの摩耗や欠けも忘れずに見てください。
- 革ベルト部分はひび割れや糸のほつれがないかも点検しましょう。
小さな異常も見逃さず、必要があれば早めに修理や交換を行うことが大切です。
鐙に関するよくある疑問

鐙は乗馬に欠かせない道具ですが、使い方や手入れ、交換時期などについて疑問を感じる方も多いです。
ここでは鐙に関してよくある悩みやトラブル、その対処法を詳しく解説します。
鐙が外れる原因
鐙が外れる理由はいくつか考えられます。
まず、鐙革(あぶみがわ)の劣化やサイズの調整ミスが大きな原因です。
また、騎乗者がバランスを崩したときに体勢の崩れとともに鐙が外れることもあります。
- 鐙革の穴が伸びている
- 鐙の幅や長さが正しく調整されていない
- 踏み方が浅い・足を引くタイミングがズレている
- 馬の動きが大きく不意に体が揺さぶられた
定期的に鐙や鐙革の点検・メンテナンスを心がけ、正しい姿勢と踏み方を身につけることが大切です。
鐙を使わずに乗る方法
鐙なしで馬に乗る方法はいくつか存在し、特にバランス感覚や正しい姿勢を身につけるトレーニングとして有効です。
主な練習方法とポイントを以下の表にまとめました。
練習方法 | ポイント |
---|---|
騎乗姿勢のキープ | 背筋を伸ばし、骨盤で座ることを意識する |
ラウンドペンで軽歩 | 鐙なしで馬の歩調に合わせて体重移動を学ぶ |
座骨でバランスを取る | 足や鐙に頼らず、お尻で安定させる |
鐙に頼らず乗ることで自然と体幹が鍛えられ、様々な状況でも安定した騎乗ができるようになります。
鐙の交換時期
鐙や鐙革は消耗品ですので、適切なタイミングで交換することが安全につながります。
以下のようなサインが現れたら交換を検討しましょう。
- 鐙革の穴がゆるんでいる
- 金具にサビや変形が見られる
- 鐙本体にひび割れや変色が発生している
- 乗馬中に不自然なきしみ音がする
鐙革の場合は半年から1年程度で点検し、少しでも劣化や不具合があれば早めに交換するのが安心です。
安全に乗馬を楽しむためにも、日々の確認とメンテナンスを心がけましょう。
鐙について知っておきたい要点

鐙とは、馬に乗る際に使われる足を乗せるための道具です。
主に鞍の左右につり下げられており、乗馬時に足を安定させやすくする役割を持っています。
鐙を利用することで、騎乗者は馬をしっかりとコントロールできるようになります。
素材は金属や木、革などが使われ、現在は軽量で耐久性の高いものが好まれています。
鐙の形状や大きさは時代や地域によって異なり、日本でも独自の発展を遂げてきました。
武士文化と密接に関わってきた歴史もあり、実用性だけでなく装飾性を重視した鐙も多く見られます。
馬を安全に乗るために欠かせない存在であり、現代の乗馬でも欠かせない装具のひとつです。